院長コラム

子宮頚がんワクチンで前がん病変を予防しましょう

2020年3月号の「メディカルトリビューン」によると、大阪大学産婦人科の先生方が、子宮頚がんワクチン(HPVワクチン)の高度異形成に対する予防効果の研究結果を報告されたとのことです。これまでも海外では、HPVワクチンの子宮頚がんおよび前がん病変の予防効果について数多く報告されていましたが、我が国でもHPVワクチンの有効性について、改めて明らかになったということです。
今回は10代~20代女性へ向けて、HPVワクチンの有効性と接種対象者についてお伝え致します。

 

 

子宮頚部異形成と子宮がん

発がん性が高いハイリスクタイプのHPVが子宮頚部に感染しても、多くの場合ご自身の免疫力によって排除されます。しかし、一部の方はHPVの感染が長期持続し、子宮頚部の上皮が徐々に変化していきます。

最も軽い病変は軽度異形成で、自然に治ることもありますが、一部の方は進行して中等度異形成となります。更に進行すると高度異形成となり、前がん病変として子宮頚部円錐切除などの治療対象になることがあります。

ちなみに高度異形成を放置すると上皮内がん、そして浸潤がんへと進行する可能性があります。したがって、高度異形成を予防するということは、浸潤がんをかなり手前の段階で予防するということになります。

 

 

HPVワクチンの有効性

愛媛県松山市の子宮頚がん検診受診者を対象に、1991~1993年度生まれの「HPVワクチン定期接種導入前世代」と1994~1996年度生まれの「HPVワクチン接種世代」に分けて比較した研究が行なわれました。ちなみに、HPVワクチン摂取率は「導入前世代」は0%に対し、「接種世代」は約80%でした。

その結果、子宮頚部中等度異形成以上の病変、高度異形成以上の病変、高度異形成のみの病変
に関して、「HPVワクチン接種世代」は「導入前世代」と比べて、すべての発生率が有意に低かった、との事です。

このことから、日本においてもHPVワクチンによる高度異形成の予防効果が明らかになりました。つまり、HPVワクチンは、子宮頚がんになるかなり手前の段階での予防が期待できるといえます。

 

 

HPVワクチン接種の対象は?

「産婦人科診療ガイドライン 婦人科外来編2017」(日本産科婦人科学会/日本産婦人科医会編集・監修)によると、最も推奨される年齢は10~14歳で、次に推奨される年齢は15~26歳の女性です。世田谷区の場合、小学6年生(約12歳)~高校1年生(約16歳)相当のご年齢の女児は、無料で接種することができます。

その後は自費診療となりますが、性交未経験の方であれば、20代であってもHPVワクチン接種は効果的です。この春高校や大学をご卒業して、進学や就職など新たな世界へ旅立つ女性も多いことでしょう。これを機に、是非HPVワクチン接種をご検討下さい。

 

 

全世界で感染が広がっている新型コロナウイルスにはワクチンがないため、その感染の予防法は「こまめな手洗い」「人混みを避ける」など、非常に限られています。
一方、子宮頚がんの原因となっているハイリスクHPVには、有効なワクチンが存在しています。
HPVワクチンを接種することで、子宮頚がんにかかるリスクを減らすことができるのです。
HPVワクチンは6か月の間に3回の接種が必要ですが、まずは「1回」接種されてみてはいかがでしょうか。