院長コラム
「母と子のメンタルヘルスフォーラム」に参加して
少子化が進む一方、妊娠中や産後に様々なメンタル不調を訴えられる妊産婦さんは増えています。さらに、育休を取る男性が少しずつではありますが増加している中、父親のうつ病が増えている事も問題となってきました。
年に一回開催されております「母と子のメンタルヘルスフォーラム」は、母子を中心としたメンタルヘルスの問題に、医療者や行政がどのようにかかわっていくかについて、情報共有・意見交換を行う場となっています。
今年は、子育て支援について、精神科医、産婦人科医、小児科医、助産師の先生方のご講演を拝聴致しました。
今回、特に個人的に学びの大きかった点について、私見を交えながらお伝え致します。
赤ちゃんのためにも養育者のサポートが大切
ヒトは他の動物に比べて、1年間早産であるそうです。そのため、生まれたばかりの赤ちゃんは皆不安で、その気持ちを伝えるために泣いたりします。
その際に、自分にとって大切な人、すなわち養育者がその気持を理解・共有し、笑顔で接することで、赤ちゃんは安心するとのことでした。
ただし、養育者自身のメンタルが弱っていると、笑顔を見せる事ができなくなり、赤ちゃんの心身に悪影響を及ぼします。しかも、母親だけでなく、育児中は父親のストレスも大きいことが知られるようになりました。
したがって、養育者全員のメンタルヘルスをケアすることが、妊娠・分娩や子育てにかかわる全ての医療従事者や行政の役割と考えられます。
当院ではこれまで、父親のメンタルヘルスケアについては、あまり積極的に関わっておりませんでした。今後は、どのように育児する父親をサポートしていくべきか、検討して参ります。
健康とは「身体的」「心理的」「社会的」に「いい状態」であること
精神科医以外の医師は、身体的な疾患の治療にのみ力を注ぎ、心理的、社会的問題の対応が十分できていない、と言われています。
これは、保健行政に関しても同様で、身体の疾患予防としての健診制度はありますが、心理的・社会的な側面からの評価・支援体制づくりは不十分であるとのことです。
今後は、医療従事者と行政がより連携を深め、特に子供たちに対して、この3つをバランスよく改善することが重要であると感じました。
その他、各施設での具体的な取り組みなど、参考になる多くのお話を聴く事ができ、学びの多い講演会でした。
当院は“こぢんまり”とした分娩取り扱いクリニックですが、近隣の小児科医、精神科医、高次施設、保健所など、多くの専門家や行政との連携を積極的に行っております。
今後、医療連携をさらに充実させて、また当院の医療レベルもさらに向上させて、赤ちゃんと養育者皆さんの「身体的・心理的・社会的な健康」をサポートして参ります。