院長コラム

11月は乳幼児突然死症候群対策強化月間です

先日厚生労働省から、11月を乳幼児突然死症候群(SIDS)対策強化月間とし、重点的に普及・啓発運動を実施するように、との通達がありました。
今回は、乳幼児突然死症候群(SIDS)診断ガイドライン(第2版)などを参考に、SIDSのリスク因子と予防法について説明します。

 

 

乳幼児突然死症候群(SIDS)とは

「それまでの健康状態および既往歴からその死亡が予測できず、しかも死亡状況調査および解剖検査によってもその原因が同定されない、原則として1歳未満の児に突然の死をもたらした症候群」と定義されています。

主として睡眠中に発症し、わが国での発症頻度は約出生6000~7000人に一人と推定されています。SIDSの発症月齢は生後2か月から6か月に多く、稀に1歳以上で発症することがあります。

原因は不明です。何らかの原因で十分な覚醒反応が起こらず、呼吸抑制を起こすようなリスク因子が重なった結果、突然死に至ってしまうと考えられています。

 

 

SIDSのリスク因子

わが国や海外の調査から、「早産児」「低出生体重児」「冬季」「早朝から午前」「うつ伏せ寝」「周囲での喫煙」「人工栄養」「暖めすぎ」などがリスク因子として考えられています。

 

 

SIDSの予防法は

厚生労働省や各研究機関などから推奨されている予防法をお示しします。

○ たばこをやめましょう。

たばこは多くの疾患の原因になっていますが、SIDSの重大なリスク因子でもあります。乳児が家庭で受動喫煙にあう時間が長ければ長いほどSIDSの割合が増加します。そのため、妊娠中はもちろん、分娩後も是非禁煙しましょう。できればお母さんだけでなく、お父さんはじめ、家族の方全員の禁煙をお勧めします。少なくとも家庭内では吸わないようにしましょう。

○ うつ伏せ寝はやめましょう。

うつ伏せ寝があお向け寝に比べてSIDSの発症率が高いことはよく知られています。できるだけ赤ちゃんの顔が見えるように、あお向けに寝かせるようにしましょう。

○ できるだけ母乳で育てましょう。

人工乳自体がSIDSの原因ではありませんが、人工乳で育てられた乳児に比べて母乳哺育の乳児のほうがSIDSの頻度が少ないことが知られています。
できるだけ母乳哺育が望ましいですが、事情により人工乳を使わなければならない時には、他のリスク因子を排除するようにしましょう。

○ 暖めすぎに注意しましょう。

乳児の暖め過ぎもリスク因子といわれています。特に冬場、乳児の体を保温するためとはいえ、就寝時に厚着させ過ぎたり、余分に毛布をかけ過ぎないよう、十分注意して下さい。また過剰な暖房も危険ですので、室温を上げ過ぎないようにしましょう。

 

 

SIDSを100%防げる予防法は、残念ながらありません。前述のリスク因子が全くなくても、SIDSとなってしまう不幸なケースもあります。それでも、SIDSの確率を少しでも減らすため、予防法を実践することは大変意義があると思います。乳幼児のいらっしゃる方は、是非実行してみて下さい。