院長コラム

高プロラクチン血症の原因と治療

プロラクチン(PRL)とは、脳にある下垂体前葉で産生されるホルモンで、乳腺の発達や乳汁分泌に関与しています。高プロラクチン血症とは、プロラクチン分泌細胞からプロラクチンが過剰に分泌される病気で、月経不順・無月経・乳汁分泌などの症状をきたします。
今回は、主な高プロラクチン血症の原因と治療について説明します。

 

 

高プロラクチン血症の原因

〇生理的要因

妊娠期・授乳期だけでなく、夜間、食後、排卵期周辺で血中のPRLは高くなります。その他、ストレスによっても高くなるため、高PRL血症にもかかわらず、月経異常がなく、乳汁分泌も見られない場合は、月経7日目以内の起床して数時間後で、食事前の午前10~11時頃に再検することが勧められています。

〇薬剤によるもの

血中PRL値の正常範囲は5~30ng/mlであり、薬剤性高PRL血症の場合は、100 ng/mlまでの軽度上昇にとどまる事が多いと言われています。

1) 抗精神薬:コントミン、セレネースなど
2) 抗うつ薬:トフラニール、トリプタノール、パキシルなど
3) 胃腸薬・制吐剤:ドグマチール、プリンペランなど
4) 降圧剤:アポプロン。アルドメット
5) エストロゲン製剤:経口避妊薬など

○ 原発性甲状腺機能低下症
甲状腺機能が低下して甲状腺ホルモンの分泌が低下すると、甲状腺に対してホルモン分泌を促すホルモン(甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン:TRH)が脳にある視床下部から分泌されます。このTRHはPRLの分泌も促す作用があるため、高PRL血症をきたすことになります。

○ 下垂体腫瘍:プロラクチノーマなど

血中PRL血症が100 ng/mlを超える場合はプロラクチンを産生する腫瘍、プロラクチノーマが隠れている可能性があります。当院では下垂体MRI検査などの精査目的で、東京医療センターなどの高次施設の脳神経外科へ紹介致します。

 

 

治療方法

薬剤性の高PRL血症の場合、該当する薬剤の減量・中止で治癒することが多いですが、向精神薬・抗うつ薬の場合は、薬剤の変更や減量が難しい場合が少なくありません。精神科あるいは内科の担当医とよく相談の上、方針を決めるようにしますが、無月経が長い場合、女性ホルモン製剤を用いて1~3か月に一回は性器出血を起こさせることがあります。

原発性甲状腺機能低下症の場合は、甲状腺専門医へ紹介致します。甲状腺ホルモンを服用することにより、血中の甲状腺ホルモンが上昇するため、TRHが減少しPRLも低下します。

小さなプロラクチノーマや原因不明の高PRL血症の場合は、ドパミン作動薬を用いた薬物療法を最低1年間は行います。ドパミンはPRLの分泌を抑制するため、ドパミン作動薬を服用することでドパミンが増加し、その結果PRLは減少します。
ドパミン作動薬には、カバサール、パーロデル、テルロンの3種類がありますが、半減期が長いカバサールを用いることが多くなっています。服用方法は、週に一回就前0.25㎎から開始し、少なくとも2週間以上の間隔で一回量を0.25㎎ずつ増量し、上限1㎎までで維持料を決定します。
尚、妊娠が判明した場合、薬物療法は中断します。

 

 

高PRL血症の患者さんは一般の方の0.4%程度ですが、卵巣機能異常のある方の9~17%に見られるそうです。特に無月経の方の20%以上、無月経と乳汁漏出を認める方の60%以上が高PRL血症ともいわれています。
妊娠期・授乳期でもないのに3か月以上月経を認めない方や乳汁が分泌される方は、是非受診して頂き、各種ホルモン検査を受けて頂く事をお勧めします。その際、服用している薬剤がございましたら、お薬手帳もご持参下さい。