院長コラム

閉経後性器尿路症候群に対する治療          ~外陰・腟レーザー治療を中心に~

閉経に伴うエストロゲン(女性ホルモン)の減少により、外陰・腟に萎縮変化がおこり、それに伴い様々な不快な身体症状が出現します。これを「閉経後性器尿路症候群:GSM(Genitourinary Syndrome of Menopause)」といい、中高年女性の半数以上の方に認められるといわれています。
今回は、閉経後性器尿路症候群に対する当院の取り組みについて、外陰・腟レーザー治療を中心に説明します。

 

 

GSMの症状

のぼせ、ほてり、発汗など自律神経失調症様の更年期症状は45~55歳前後の、いわゆる更年期の時期を中心に多く見られます。一方、性器尿路系の萎縮症状は、50歳前後から出現し始め、80歳以上になるまでの長きにわたり悩まされ続けることがあります。

エストロゲン低下と加齢変化によって、末梢血行の減少、腟分泌の減少が見られ、乾燥が進みます。また、皮膚や粘膜の保水力の低下やコラーゲンの減少などにより、上皮が薄くなり、刺激に対して防御が弱くなります。更に、腟内の雑菌繁殖を防ぐために必要な善玉菌(乳酸桿菌)が減少することで、悪玉菌である雑菌が増殖し、腟炎をきたしやすくなります。

これらの結果として、腟乾燥感、性交痛、外陰部掻痒感、外陰部痛・灼熱感、におい、尿失禁など、多岐にわたるGSMの症状に長年悩まされることになります。

 

 

GSMに対する治療

様々なGSMの症状のうち、外陰・腟の萎縮症状に対してはエストロゲン腟錠による局所的投与が中心になります。他の更年期障害や閉経後骨粗鬆症の治療・予防を考慮した場合は、エストロゲンを含む内服薬や経皮剤による全身投与が行われます。

外陰部痛・掻痒感や灼熱感に対しては、保湿のためのワセリン、炎症を抑えるヒルドイドソフト軟膏、マイルドなタイプのステロイド軟膏などの外用剤を用います。

尿失禁に対しては、腹圧性尿失禁には骨板底筋体操を指導し、過活動膀胱に伴う切迫性尿失禁には抗コリン剤(ステーブラ)やβ刺激剤(ベタニス)などの薬物療法が主体になります。

以上の治療に抵抗するような症状がある場合、特に性交痛や乾燥感などの症状が強い時にはレーザー治療が奏効することがあります。

 

 

外陰・腟レーザー治療のポイント

当院では炭酸ガスレーザーを使用しています。レーザーが発生する熱が皮膚や皮下組織に作用し、コラーゲンを増殖させることで、腟の弾力性や水分量が改善し、不快な腟症状を軽減させることを目指しています。

当院では外陰・腟レーザー治療のみの方だけでなく、ホルモン補充療法や外用剤による治療と組み合わせている方々も多くいらっしゃいます。

通常は一か月ごとに3回の外陰・腟レーザーによる治療が行われていますが、1~2回の施術で効果を実感される方も少なくありません。

 

 

当院では2017年9月から外陰・腟レーザー治療行うようになり、約20名に計50回の施術を行って参りました。個人差はあるものの、多くの方で症状が改善し、ご満足頂いております。
外陰部の不快な症状や性交痛などのお悩みを抱えている方は少なくありません。
お一人で悩まず、是非ご相談下さい。