院長コラム

産婦人科関連の皮膚疾患

皮膚についての正しい知識の普及や皮膚科専門医療の啓発を目的に、11月12日(いいひふ)は「皮膚の日」に制定されております。
産婦人科医療におきましても、多くの皮膚疾患がありますが、今回は、「にきび」「妊娠に伴う皮膚疾患」「外陰部の接触皮膚炎」についてお話します。

 

 

にきび(尋常性ざ瘡)

にきびは、男性ホルモンの作用によって皮脂の分泌が増加し、毛穴に皮脂が貯留し、皮膚の細菌に感染することで生じる炎症性皮膚疾患です。10~20代に発症することが多く、にきび用の外用剤、抗生剤の外用剤や内服薬を用いて治療し、瘢痕にならにようにすることが目標になります。

治療の多くは皮膚科で行われますが、にきびの治療として、婦人科で低用量ピル(OC)が処方されることもあります。OCあるいは低用量エストロゲン・プロゲスチン配合剤(LEP製剤)に含まれる黄体ホルモン製剤の種類によっては男性ホルモン様作用を持つものがありますが、LEP製剤のヤーズ配合状およびヤーズフレックス配合錠に含まれているドロスピレノンという黄体ホルモンには、男性ホルモン様作用がほとんどありません。

当院では、にきびが気になる女性で、月経痛も認める方には、保険診療でヤーズ配合状あるいはヤーズフレックス配合錠を処方することがあります。皮膚科治療に併用することも可能ですので、ご興味ある方は是非ご相談下さい。

 

 

妊娠性痒疹と妊娠性掻痒性蕁麻疹様丘疹局面(PUPPP)

妊娠中に認められる皮膚疾患で代表的なものが妊娠性痒疹とPUPPPです。

妊娠性痒疹は、妊娠3~4ヶ月の初期から中期にかけて、四肢から体幹へ広がる強い痒みを伴う紅色丘疹です。頻度は全妊婦の1~2%で、2回目以降の妊娠でみられ、妊娠の回を重ねるごとに症状は増悪します。

一方、PUPPPは妊娠後期、腹部から始まる蕁麻疹様丘疹で大腿・殿部に拡大することがあります。頻度は240例に1例程度で、初産婦さんに発症するといわれており、次回妊娠での再発はほとんどありません

どちらも治療は、ステロイドの外用剤と抗ヒスタミン薬の内服が主体ですが、母体や胎児への影響はなく、分娩後には症状が消失します。

 

 

外陰部接触皮膚炎

カンジダやトリコモナスといった感染症が認められなくても外陰部の痒み訴えるかたは、決して少なくありません。慢性の痒みを訴える成人女性の約50%は接触皮膚炎(いわゆる、かぶれ)といわれています。

外陰部は湿気に富んだ環境であり、刺激に対して敏感であるため、不衛生な状態、生理用ナプキンや洗浄剤、腟炎による帯下、合成繊維の下着などの刺激により炎症が発生し、悪化します。また、過度な洗浄(刺激の強い石けんや高温水など)も皮膚のバリア機能を低下させ、刺激性を増強させますので要注意です。

治療はステロイド外用剤や抗ヒスタミン薬の内服を用いますが、乾燥が強いときにはヒルドイドソフト軟膏やプロペト軟膏、症状が軽度で皮疹がないときにはレスタミンコーワクリームなどを使用することがあります。

当院では、外陰部洗浄用として、低刺激で弱酸性、抗菌・抗真菌成分配合の「コラージュフルフル液体石けん」をお勧めしています。

 

 

その他にも皮膚症状を認める婦人科疾患は数多く、ある程度の疾患に対しては外用剤や内服薬を用いることで改善が期待できますが、治療に抵抗性を示す場合や重篤な皮膚疾患が疑われるときには、皮膚科専門医へ紹介致します。
その際、特に外陰部の症状がある方には、できるだけ女性の先生を紹介させて頂いております。