院長コラム

日本人の平均寿命過去最高

7月20日、2017年の日本人の平均寿命は女性が87.26歳、男性が81.09歳で、ともに過去最高を更新した、と厚生労働省から発表がありました。
特に、がん、心疾患、脳血管障害の死亡率の低下が平均寿命を押し上げているとのことです。
今回は、女性の平均寿命更新について、個人的な感想お話します。

 

 

大切なのは健康寿命の延長

2001年に84.93歳であった女性の平均寿命は2016年に87.14歳となり、2.2年延長しました。一方、自立し健康でいられる健康寿命は、2001年72.65歳であったのが、2016年には74.79歳と延長しましたが、2.14年の延長にとどまっています。
そして、この間の平均寿命と健康寿命の差は12.28~12.90年で推移しており、決して縮まっていません。
おそらく2017年の健康寿命の延長も、あまり期待できないでしょう。
確かに平均寿命の延長は喜ばしいことですが、寝たきりの期間が、決して短くなっていないことにも注目すべきです。

 

 

健康寿命延長のために

婦人科開業医として、女性の健康寿命延長に関与することができるとすれば、次の3点が考えられるでしょうか。

 

(1) 骨粗しょう症の予防

骨粗しょう症は寝たきりの原因となる大腿骨頚部骨折を引き起こすため、その予防はとても重要です。女性の場合、骨量は思春期に激増し、20歳頃で最大となり、その後の性成熟期はゆっくり減少していきます。閉経前後でエストロゲンという女性ホルモンが減少すると、骨がどんどん溶け出し骨量は激減します。
つまり、思春期には十分骨量を増やし、性成熟期にはできるだけ骨量を維持し、エストロゲンが低下する更年期にはホルモン補充療法などで対抗することが大切です。これらの対策で骨量減少を最小限に抑えることが、骨折を防止し、ひいては健康寿命の延長につながると思われます。

 

(2) 動脈硬化の予防

動脈硬化は心筋梗塞や脳血管障害など、多くの重大な疾患の原因になります。さまざまな生活習慣が動脈硬化の活性に関与していますが、婦人科疾患そしては子宮内膜症との関連がいわれています。
子宮内膜症を積極的に治療することで、将来的に動脈硬化の予防、そして心血管疾患、脳血管障害などの予防につながる可能性もあります。

 

(3) 子宮頚がん・卵巣がんの予防

婦人科がんの中には、ある程度予防できるものがあります。子宮頚がんはハイリスクヒトパピローマウイルスによる感染が原因のほとんどであるため、できるだけ性交を経験する前のHPVワクチンを接種することが大切です。

子宮内膜症に伴う卵巣腫瘍は将来卵巣がんになる可能性があります。また、排卵とは卵巣表面を傷つける現象であるため、排卵が多ければ多いほど卵巣がんになるリスクが高くなります。そのため、比較的若年から低用量ピル(低用量エストロゲン・プロゲスチン配合剤)を服用することで、子宮内膜症の予防・排卵の抑制を通じ、結果的に卵巣がん予防につながることが期待できます。

 

 

これからは単に平均寿命の更新を目指すのではなく、地に足をつけた予防・早期治療に心がけることが大切でしょう。
そのことが寝たきりの予防につながり、健康寿命が延長し、その結果として平均寿命も延長するのであれば、大変有難いことだと思います。