院長コラム

思春期から中高年までの骨粗鬆症対策

国際骨粗鬆症財団は、世界から骨粗鬆症による骨折をなくすことを目的に、10月20日を世界骨粗鬆症デーに制定しました。
骨代謝と女性ホルモン(エストロゲン)とは密接な関係があるため、婦人科でも骨粗鬆症の予防や治療に携わっています。
今回は、骨粗鬆症予防について運動と栄養を中心にお話します。

 

 

骨粗鬆症とは?

「骨粗鬆症とは、骨強度の低下を特徴とし、骨折のリスクが増大しやすくなる骨格疾患」と定義されています。骨強度は骨密度と骨質の2要因からなり、通常は骨密度で評価します。

当院では踵の骨の超音波検査を骨粗鬆症スクリーニング検査として行っています。20~44歳までの若年成人女性の平均値(YAM)を基準にし、YAMの70%以下を骨粗鬆症、70~80%を骨量減少と評価しています。

 

 

若い世代の運動による骨粗鬆症対策

女性の場合、エストロゲンが増え始める初経頃から骨密度は増加し、20歳前後ですでにピークを迎えます。したがって思春期から性成熟期の間の生活習慣が非常に大切になります。

若年者の運動に関する研究では、比較的重い負荷によるトレーニングや週3~5回の持久性トレーニングを半年~3年くらい実施している報告が多く、ほとんどで骨密度が増加したと結論しています。

つまり、若いうちから、ある程度負荷がかかる運動を継続的に行うことが、骨粗鬆症発症予防につながる、というわけです。

 

 

若い世代の食事による骨粗鬆症対策

カルシウムは体重の1~2%を占め、その99%は骨と血液に存在しています。思春期前は骨がどんどん作られるので、初経前から適切な栄養とカルシウム摂取が必要です。

若年者におけるカルシウム摂取による骨量の研究では、カルシウム投与による骨密度の増加は確認されましたが、中止するとその効果はなくなったようです。

つまり、若い世代からカルシウム摂取が重要ですが、継続することがもっと大事である、といえます。尚、1日のカルシウム摂取推奨量は18~69歳までの女性では650mgとされています。

ちなみに、カルシウムを多く含む食品は、牛乳・乳製品、小魚、大豆製品、小松菜などです。

 

 

中高年女性の食事と運動

食事に関しては、エネルギー摂取量や各種栄養素をバランスよく摂取することが重要であり、特にカルシウム、ビタミンD、ビタミンKを積極的に摂ることが推奨されています。もし、骨粗鬆症の治療中であれば、カルシウム700~800mg、ビタミンD 400~800IUを1日に摂取する必要があります。また、ビタミンKは1日の目安量を150μgとされています。

ちなみに、ビタミンD を多く含む食品はサケ、ブリ、サンマ、カレイ、干ししいたけ、きくらげ、卵など、ビタミンK を多く含む食品は、ブロッコリー、ホウレンソウ、キャベツ、ニラ、納豆、干しワカメなどです。

また、閉経後女性を対象とした運動に関する研究では、運動群は非運動群に比べて腰椎および大腿骨頚部の骨密度が維持ないし増加したと報告されています。運動内容では、ウォーキング、ランニング、エアロビクスなどの身体活動が有効ですが、日常生活で活発に身体を動かすだけでも骨折予防になるようです。

 

 

世田谷区の場合、30歳から70歳までの5年ごと、つまり年度内に30・35・40・45・50・55・60・65・70歳になられる方は、「骨粗しょう症検診」が400円で受けられます。
自分はまだ大丈夫、と思わずに5年に1回のチャンスを是非利用して、現時点での骨密度を把握しておきましょう。
それが骨粗鬆症予防の第一歩です。