院長コラム

妊娠中・分娩時・産褥期の母児感染を防ぐためには

風疹ウイルス、サイトメガロウイルス、トキソプラズマ、クラミジア、リステリアなどの微生物は、妊娠中、分娩時、産褥期に、母親から赤ちゃんに感染する可能性があります。
日本産科婦人化学会および日本周産期・新生児医学会は「赤ちゃんとお母さんの感染予防対策5か条」を作成しています。
今回はこの5か条を少し改変し、もう一条加えた6か条として、紹介したいと思います。

 

 

1. 妊娠中は家族、妊娠前と産後は自分にワクチン接種をしましょう!

風疹・麻疹(はしか)・水痘(みずぼうそう)・流行性耳下腺炎(おたふくかぜ)はワクチンで予防可能なウイルスです。ただし、
これらのワクチンは生ワクチンといって妊娠中に接種ができないため、妊娠する前もしくは分娩後(授乳中でも接種可能)に接種するようにしましょう。
 
尚、風疹ワクチン(麻疹風疹ワクチン含む)・水痘ワクチンは接種2か月間、その他の生ワクチンは接種1ヶ月間妊娠を避けてください。

ちなみにインフルエンザワクチンは不活化ワクチンといって妊娠中いつでも接種が可能です。

 

 

2. 手をよく洗いましょう!

食事の前、外出から帰った時など、しっかり手洗いをしましょう。
特に調理時に生肉を扱う時、ガーデニングをする時、猫などの動物の糞を処理する時などは使い捨て手袋を使用し、その後丁寧に手洗いしましょう。

ちなみに国内の猫のトキソプラズマ感染率は10%といわれており、野良猫、特に子猫が危険のようです。妊婦さんは道端で子猫を見つけても、可愛いからといって触らないようにして下さい。

 

 

3. 体液に注意しましょう!

尿、唾液、体液などに母児感染の原因となる微生物が含まれることがあります。妊婦さんは、上のお子さんのおむつの処理の際は使い捨て手袋を使用し、食べ物の口移しはやめましょう。

ちなみに、妊娠中の性生活は必ずコンドームを使用しましょう。
オーラルセックスは避けるか、コンドーム着用が必須です。

 

 

4. しっかり加熱したものを食べましょう!

妊娠中は、生肉(火を十分に通していない肉)、生ハム、サラミ、加熱していないナチュラルチーズ・カマンベールチーズ、未滅菌の牛乳など召し上がらないようにしましょう。生野菜はしっかり洗いましょう。

 

 

5. 人混みは避けましょう!

風疹や麻疹など、いつどこで流行するかわかりません。特に、混雑しているイベント会場・コンサート会場や公共交通機関などは危険です。できるだけ人ごみは避け、外出時にはマスクを着用し、帰宅したら手洗い・うがいを励行しましょう。

 

 

6. しっかり治療しましょう!

外陰部ヘルペスがみられたら抗ヘルペスウイルス薬であるバルトレックス2錠/日を5日間内服およびアラセナA軟膏などの外用剤、クラミジア頚管炎と診断されたらジスロマック1000mg単回内服、淋菌感染症の場合はロセフィン1g点滴単回投与など、妊娠中に治療できる薬剤があります。また、2018年9月に抗トキソプラズマ原虫剤「スピラマイシン」が発売されました。

薬剤による胎児や乳児の影響を心配して薬物療法を行わない方もいらっしゃいますが、赤ちゃんに安全な薬剤については、是非使用しましょう。

 

 

どうしても妊婦さんや褥婦さんは免疫力が低下します。上記の6か条を心がけて頂くのと同時に、バランスの取れた食事、質の高い睡眠といった生活習慣に気を付けましょう。