院長コラム

妊娠中に服用可能な薬剤は? ―抗生剤・抗ウイルス薬・消炎鎮痛剤―

以前のコラムで、「抗インフルエンザ薬は、妊婦さんでも使用できる」とお伝えしましたが、今回は他の薬剤についてもお話したいと思います。

【抗生剤】

妊婦さんは抵抗力が低下するため、細菌感染が原因の膀胱炎、気管支炎、副鼻腔炎になることも少なくありません。また、虫歯や親知らずの抜歯をしないといけないケースもあります。そのような時は、抗生剤が必要になります。

抗生剤には様々な種類がありますが、ペニシリン系、セフェム系、マクロライド系といわれる抗生剤は比較的使用しやすい抗生剤です。

当院では、通常「メイアクト」(セフェム系内服薬)を処方することが多く、気管支炎・副鼻腔炎、クラミジア感染症には「ジスロマック」(マクロライド系内服薬)を処方しています。
また、腟や肛門周囲の培養検査でB群溶連菌が見つかった妊婦さんの場合、分娩時に赤ちゃんが感染しないように、陣痛からお産まで「ビクシリン」(ペニシリン系点滴)を4時間毎に点滴しています。

【抗ウイルス剤】

以前お伝えしましたように、抗インフルエンザ薬の「タミフル」、「リレンザ」そして「イナビル」は妊婦さんにも投与可能です。

また、妊娠中、免疫力が低下して口唇ヘルペスや性器ヘルペスが再発することがあります。その際用いる抗ヘルペスウイルス剤も問題ありません。当院では内服薬として「バルトレックス」、外用剤として「アラセナA軟膏」を主に処方しています。

【解熱鎮痛剤】

妊娠中、頭痛や腰痛、歯痛など、様々な痛みに悩まされることがあります。ただし、鎮痛剤の服用には注意が必要です。

《妊娠28週頃まで》
この時期は消炎鎮痛剤の使用に関して、流産や胎児への影響はあまり心配されなくてもいいでしょう。

当院では「カロナール(アセトアミノフェン)」を第1選択として用いていますが、鎮痛効果が弱いときには「ロキソニン」などを使用することもあります。
ただし、「インダシン」、「ボルタレン」は全ての妊娠期間を通じて禁忌ですので、もしお手元にお持ちであったとしても、服用しないで下さい。

《妊娠28週以降》
この時期は、ほぼすべての解熱鎮痛剤が胎児に悪影響を及ぼす可能性があります。したがって、妊娠初期から中期に用いることができた「ロキソニン」なども妊娠後期は避けています。当院では、比較的胎児への影響が少ない「カロナール」を必要最少量で用いています。

ちなみに、肩こりや腰痛に用いる外用剤も、できれば妊娠後期は避けたほうがいいと言われています。
当院では、妊娠28週以降の妊婦さんに対して「ロキソニンテープ」を1日1枚、短期間で使用することもありますが、手持ちに湿布薬があったとしても、漫然とお使い頂く事のないようにお願い致します。

妊娠中、薬物使用をご希望の際には、私やスタッフに是非ご相談下さい。