院長コラム

ホルモン補充療法中の不正出血

更年期障害・骨粗鬆症の治療および予防に対して、ホルモン補充療法(HRT)は大変有用な治療です。
しかし、HRT開始してから特に3ヶ月の間は、ある程度の不正出血を認めることも少なくありません。
今回は、HRTの副作用の一つである不正出血について説明します。

 

 

まずは子宮体がん検査

HRT中の出血で最も注意しないといけないのは、子宮体がんです。HRT開始前に子宮体がん検査を行っていない方が不正出血をきたした場合は、超音波検査で子宮内膜が厚くなっていないことを確認し、可能な限り子宮内膜の細胞診または組織診を行ないます。

また、子宮頚がんの可能性も否定できない場合は、子宮頚部細胞診も行います。

以上の検査で子宮体がん・子宮頚がんが否定されたら、ホルモン剤の使用法について検討します。

 

 

エストロゲンとプロゲスチンの内膜への影響

更年期障害・骨粗鬆症の治療・予防に効果があるホルモンはエストロゲンですが、エストロゲンは子宮内膜を増殖・肥厚させる作用があるため、エストロゲン単剤で長期投与した場合、子宮内膜増殖症や子宮体がんのリスクが増加することが知られています。そのため、子宮がある方に対しては、子宮内膜の増殖を抑制する働きのあるプロゲスチンを併用します。

 

HRT中に出血する理由

エストロゲンの用量が多いと子宮内膜が肥厚しますが、何らかの理由で血中のエストロゲン濃度が減少すると、内膜が剥がれ落ちて出血します。

また、プロゲスチンは子宮内膜の増殖を抑える作用がありますが、種類や量によってその強さが異なり、内膜を萎縮させる作用が弱いと出血が持続することがあります。

 

 

ホルモン剤投与の工夫

当院で使用するエストロゲン・プロゲスチンの持続併用療法で多いのが、ジュリナ1錠+デュファストン1錠の内服薬です。この組み合わせで出血が持続する場合は、デュファストンの代わりに、より内膜萎縮効果の強いプロベラ1錠に変えることがあります。

メノエイドコンビパッチというエストロゲンとプロゲスチン合剤の経皮剤で出血が持続するケースでは、パッチを半分に切って貼付してみたり、内服薬のジュリナ・プロベラに変更するなどしています。

その他、薬剤の投与方法や種類を変えながら、効果は保ちつつ、出血を抑える方法を探っていきます。

 

 

 

HRTを行っている方のほとんどは、長くても半年から1年で子宮内膜が萎縮するため、不正出血の量・頻度ともに減少します。
それでも、不正出血は不快で、日常生活に支障をきたす事があります。
これからもできる限り、HRT中の不正出血を減少させるよう、取り組んで参ります。