院長コラム

ドラッカーの視線で医療を見つめると

ピーター・F・ドラッカーといえば、「マネジメント」にご興味がある方であればご存知かと思いますが、20世紀を代表する経営学者の一人です。
そんなドラッカーの理論と医療を結びつけた、「治療格差社会 ドラッカーに学ぶ、後悔しない患者学」(田中道昭著 講談社+α新書)を読んでみました。
「患者学」という副題ではありますが、医師として、私も大いに学ぶところがありました。
今回は、この本の中から、“ドラッカー名言”をいくつかご紹介したいと思います。何か、皆様のご参考になれば幸いです。

 

 

“差し迫る重大な現実を見逃し、あるいは注意さえ払わないことほど危険なことはない。”『断絶の時代』

「最近、心身の調子が悪いが、気のせいかも知れない。仕事や家事・育児で忙しいから、病院やクリニックを受診せずに、様子を見よう。」という方も、決して少なくないでしょう。しかし、重大な病気が隠れているかもしれません。早めの医療機関の受診が、今後の人生を大きく変えるかも。

 

 

“未来を語る前に、今の現実を知らなければならない。なぜならば、常に現実からスタートすることが不可欠だからである。”『産業人の未来』

「今まで健康であったから、これからも大丈夫だろう」と思っていると、気付かないうちに病気が体を蝕んでいるかもしれません。定期的に健康診断を受けて、現在の自分の姿を確認することがとても大切です。

 

 

“目標は、実行に移さなければ目標ではない。夢にすぎない。”『エッセンシャル版 マネジメント』

「健康のためには、適度な運動習慣、バランスの取れた食事、良質な睡眠が大切だ」ということで、健康維持のために目標を立てる方も多いかと思います。しかし、なかなか実行に移せない、あるいは移さない方もいらっしゃいます。一人で目標を達成することが難しければ、ご家族やお友達のご協力を仰いではみてはいかがでしょうか。

 

 

“フィードバック分析から、いくつかの行うべきことが明らかになる。(中略)行っていること、あるいは行っていないことのうち、仕事ぶりを改善し、成果を上げるうえで邪魔になっていることを改めなければならない。”『プロフェッショナルの条件』

健康診断を受けるということは、「体のどこに問題があるのかを知り」、そして「健康を損ねている原因を改善するきっかけとなる」と、筆者は語っています。

ちなみに、先日、年一回の健康診断を私も受けてきました。結果を直視して生活を改善したいと思っています。

 

 

“真摯さは習得できない。真摯さはごまかしがきかない。部下たちは、無知、無能、態度の悪さや頼りなさには、寛大たりうる。だが、真摯さの欠如だけは許さない。決して許さない。”『エッセンシャル版 マネジメント』

これは私自身、この本の中で最も胸に刻み込まれた名言の一つです。知識を深め、技術を磨き、コミュニケーション力を向上させて、患者様や院内スタッフから信頼されるように努力することは、もちろん臨床医として大切なことであり、日頃から精進しないといけないと思っています。
しかし、「真摯であるかどうかは他人が決めることであって、自分自身で勝手に評価することではない。周りの人々から、いつも見られていることの怖さを決して忘れてはならない」と肝に銘じて、これからも日常診療に向き合って参る所存です。