院長コラム

トリコモナス腟炎が50代で増えてきています

一般的に性交渉で感染する可能性が高いトリコモナス腟炎ですが、性行為が活発な20~30歳代だけでなく、50歳代にも発症のピークがあると、ある研究報告で発表されました。
今回は、トリコモナス腟炎について説明します。

 

 

トリコモナス腟炎とは

腟粘膜細胞はグリコーゲンという物質を産生しており、腟内にいる善玉菌のエサになっています。この善玉菌は腟内を酸性に保ち、雑菌の増殖を抑える働きがあります。

ところが、トリコモナス原虫もグリコーゲンが大好物であるため、トリコモナス原虫が性交などにより膣内に侵入すると、グリコーゲンを消費してしまい、競争に負けた善玉菌は減少します。

その結果、トリコモナスだけでなく、他の雑菌まで増殖し、細菌性腟症も引き起こします。

 

 

トリコモナス腟炎の感染経路

主に性行為により感染しますが、下着・タオル、浴槽、便器、サウナのマットなど、多くの経路で感染する可能性があります。つまり、性交してなくても感染する可能性がある旨、留意する必要があります。

ちなみに、ご自身が感染していたからといって、必ずしもパートナーが浮気していたとは言い切れませんので、くれぐれもご承知おき下さい。

 

 

トリコモナス腟炎の症状

感染から5~28日の潜伏期間の後、腟や外陰部の激しいかゆみ、帯下の増量がみられることが多く、膀胱へ感染が広がった場合には排尿時違和感など、膀胱炎の症状をきたすことがあります。

ただし、約20%の方は無症状といわれていますので、ご自身に上記のような症状がなくても、パートナーの方が感染している場合にはご自身も感染している可能性があります。

 

 

中高年も要注意

女性ホルモンが低下すると腟内の善玉菌が減少するため、トリコモナスをはじめ、雑菌がはびこる可能性があります。

そのため、閉経後の方、あるいは女性ホルモンを抑制する治療をされている方はトリコモナスに感染しやすくなりますので、プールや銭湯、サウナなどご利用の際もご注意下さい。

 

 

トリコモナス腟炎の検査・治療

帯下の培養検査や子宮頚部細胞診などで診断します。

治療は内服薬が基本になります。フラジール錠を1日2回10日間処方し、治癒しないときには1週間あけて追加処方します。

難治性の場合はフラジール腟錠を10~14日間内服薬に併用することがあります。また、妊婦さんには内服薬を使用せず、フラジール腟錠を第1選択とします

ちなみに、フラジール内服薬の服用中および投与後3日間は、飲酒を避けましょう。腹痛や嘔吐で苦しむ可能性があります。

 

 

トリコモナス腟炎は必ずしも重篤になる疾患ではありませんが、しっかり治療しないとパートナー間でいつまでも「移り合いっこ」してしまいます。
かゆみ・帯下が気になれば婦人科を受診し、診断されたらパートナーも一緒に、治るまで治療を続けましょう。